日本を被う電線の網 ~日立電線株式会社~
「日本の風景にかくべからざるものは山水だが、
次に電柱と電線であると言える。
電線はビルの中に網を張り、地下を無限に延びていく。
電話がふえれば、通信用ケーブルの需要がふえる。
電線の供給が需要に追いつかないとメーカーは嬉しい悲鳴を上げている。
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電線と言えば、誰でも電信柱の上を走っているあの電線を頭にうかべる。
人間の通行のためにつくられたものが道路だとすれば、
電線はさしずめ電流のためにつくられた道路ということになろう。
人間の通る道路もむかしはこんにちのような自動車の洪水を
予想していなかった。
だから道幅はせまいし、せっかく舗装をしても見かけだおしで、
交通量が増大すると、たちまちもとのデコボコ道に戻ってしまう。
そこで道路の抜本的な建設が政治問題となり、
今年の予算は、一名道路予算と呼ばれるくらい、
道路の改修新設が関心の中心になっている。
『電流の道路』である電線についても、同じようなことが言える。
明治時代に日本にはじめて電燈がひかれるようになった時、
電流の道路をなるべく安上がりに仕上げるために、
日本人は電信柱を使って送電する方法をえらんだ。
貧乏国が文明の利機を駆使するためにえらんだ、
ホンの間に合わせの手段であった。
ところが、何事もはじめが大切であるというたとえどおり、
地上送電はついに日本全国に定着してしまった。
安上がりなことは安上がりだが、電信柱は交通妨害だし、
街の美観を害するし、何よりも台風と時は停電をおこしがちである。
いっそ先進諸国にならって地下送電にきりかえればよいが、
金のかかることはなるべくやらないでおこうという社会風潮だから、
ホンの間に合わせにすぎなかった電信柱を、
コンクリート柱に変える時代になり、おかげでセメントの二次製品である
コンクリートやヒューム管の会社の株価があのとおりの高値である。
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1.電流の世界もラッシュ時代
一方、家庭電化の普及によって、電線は人体における毛細血管のように
家々にくまなく張りめぐらされ、他方、産業の発展によって
動力の利用はますますふえてきているので、
これに電力を送る肝心の大動脈が硬化を起こしかねまじきいきおいである。
そこで電線の開発を進める一方、電力十ヵ年計画によれば、
従来十五万ボルトで送電されていたのを
四十万ボルトにかえようという動きも出てきた。
電圧を高くすれば、それだけ送電途中におけるロスを
防ぐことができるからである。
もしそういうことになれば、というよりもそうなることは
早い遅いの違いがあるだけと言った方が正しいが、
東京や大阪を中心とする送電線はやがて四十万ボルトにかわるだろうし、
さらに時差による電力使用量のデコボコを全国的に調整するようになれば、
それが全国に及ぶようになるだろう。
この観点に立てば、従来とかく、災害でも起こらないかぎりは
派手な動きを見せなかった電線株にも、静かなブームが起こりつつある、
と見ることができるのである。
もっとも、そうした抜本的な送電計画を勘定に入れないでも、
家庭電化とビル・ブームと設備投資と電電公社の拡充計画によって、年々歳々、
電線の需要は確実に延びており、今後も相当な伸びが約束されている。
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2.一本立ちの日立の息子
現在、日本でこうした『電流の道路』を製造している
いわゆる電線メーカーの大手は、古河電工、住友電工、日立電線、藤倉電線、
大日電線、昭和電線電纜、日本電線の七社である。
この順序は実は売上高の多い順序でもあって、時に大日電線と
昭和電線電纜の売上が入れかわったり、日本電線が川崎駅前の工場敷地問題で
投機の対象となることを除けば、七社とも株価は至って地味な動きしかしない。
ただ七社をこうして並べて見て、ちょっと意外に思うのは、
昨年十二月に店頭へ初公開されたばかりの日立電線が
第三位に位していることであろう。
『うちの会社は日立製作から独立して日が浅いものですから、
藤倉さんよりも生産高が多いと言っても、
へえ、そんなものですかと驚く人が多いんですよ』
と、私を日立へ案内してくれた経理部副部長の大貫保雄さんは説明してくれた。
日立電線はもともと日立製作所の電線部門で、
同社としても最も力を入れた部門である。日立の現社長倉田主悦さんも、
かって電線部長をつとめたことがあったそうだ。
その電線部門が独立して日立電線株式会社になったのが、
昭和三十一年十月。
資本金五億円、全額日立製作出資という形で出発した。
したがって人事も日立人事で、会長は倉田さんが兼任し、
現社長の松浦孝義さんは前の日立製作の副社長、
現に日立製作の取締役を兼任している。
こうした人事を見る限り、日立電線は日立製作の出店にすぎないが、
親のもとで育った息子が独立して自分のソロバンで生きていく方が、
いつまでもオヤジの家でお仕着せをもらっているよりも
如何によくなるかを如実に示す模範例なのである。
これは大会社の経理出身幹部だった人としては珍しく
現社長の松浦さんが非常な積極論者だったからであるが、もう一つには、
オヤジのバッグがよろしくて、積極経営を推進しても
製品をオヤジが買ってくれるという安心感があったからでもあろう。
現に、増産体制の整った今日でも、
全製品の三割は日立製作所に納入しているのである。」
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今回から日立電線株式会社が始まります。
日立製作所のテレビコマーシャルではありませんが
日立に多くのグループ企業があるのは知っていますが、
日立電線株式会社のことはあまり知りませんでした。
例によってインターネットで会社概要を見てみると
次のように紹介されています。
1)設立年月 1956年4月
2)営業開始年月 1956年10月
3)取扱商品
a)送電線、配電用ケーブルなど電線
b)光ファイバーケーブル、メタル通信ケーブル
c)イーサネットスイッチ(Apresiaシリーズ)
d)メトロ伝送装置(GMX, eWAVEシリーズ)
e)VoIP製品(ワイヤレスIP電話機、IP-PBX)
f)放送・通信用アンテナ
g)化合物半導体など半導体材料
h)ブレーキホースなど自動車部品
i)銅管、銅条、電気用伸銅品など銅加工品
j)各種センサー
4)資本金 259億4,801万円
5)2007年3月期決算
a)売上高 連結:544,244百万円
単独:325,091百万円
b)経常利益 連結: 20,449百万円
単独: 10,590百万円
c)従業員数 連結: 15,100人
単独: 4,076人
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日立電線株式会社は日立金属・日立化成工業とともに、
日立御三家と呼ばれているそうです。
最近は建設機械である日立建機の業績が良く、貢献しているという記事を
見たことがあります。
送電の方法としては、送電の電信柱による地上送電が一般的ですが
昨今は最初から電信柱をなくした地下送電のある住宅街も見られます。
やはり美観を害するということでしょうか。
それでも一部の地域であって、大都市の大きなビルはともかく
ビル近くの人家になると、電信柱が立っています。
日立電線はその名の通り、電線から出発した会社のようですが、
取扱商品も光ファイバーケーブルなどにも進出しているようで
多様化しています。
技術は、よく次のようなことを満足すれば、
最後まで商品・製品として残ると言われています。
1)シンプルであること。
2)理想的であること。
3)理論的であること。
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また、一つの商品は用途に応じて、派生しながら進歩するという
傾向があります。
例えば電池一つにしても、家庭用に使われる電池と自動車用の電池では
使い方が違いますが、それぞれに大なり小なりに進化していくものであります。
このように企業の持つ強みを生かしながら、
成長期は親会社から分離したグループ会社が出来てきました。
一方では集中と選択ということで、取捨選択が行われる時代になりました
雲が流れ、水が流れるように
時代は企業を巻き込みながら変化していっています。
このことは、GDPにも変化の数字が現れています。
ご承知のように、先般の内閣府がまとめた日本の国内総生産が
世界に占める割合は、円安の影響もあって名目で9.1%だそうです。
額は4兆3755億ドル(1ドル=116円換算で約508兆8707億円)。
ピークはバブル経済末期の6年に17・9%。
これに対して米国の比率は27・2%、
EU(欧州連合)15カ国は28・3%。
では経済成長を続ける中国はというと、2006(18)年の名目GDPは、
2兆6447億ドルとなり世界に占める割合は
前年より0・5ポイント上昇して5・5%。
中国が今後も年13%程度の成長を続けると、
日本が2%程度の成長を続けたとしても、
平成23年には中国に抜かれてしまうということだそうです。
以上は内閣府のまとめたネットからの数字でした。
これによると4年後に東アジアの主役が交代することになります。
時の勢いにはかないません。
現状を見て、投資家も対応していかねばなりません。
こういったことで、今年も一年が終わりました。
では皆様方、良い年をお迎え下さい。